なずな日記

2018.05.14

寂しいと思うのは

寂しいと思うのは

風呂好きだったおいちゃんとなずなは、普段はフィットネスクラブの風呂に入っていたけれど、フィットネスクラブが休みの日は自転車で30分もかかるスーパー銭湯に行っていました。回数券を買うと安上がりで、一回500円くらいです。

おいちゃんと一緒に行っていたときは、入るときに二人で時間を決めて風呂場に向かったものでした。

 

一人になった今では、入り口で回数券を渡すと、時間なんか気にせず自分のペースで風呂に入れます。のんびりゆったりしています。

大きなお風呂、気持ちいいのに。日本人で良かった。

人気のスーパージェットバスには、いつも誰かが入っています。電気風呂のチリチリした感触を楽しみながら、スーパージェットバスが空くのを待ちました。やっと空くとすぐに移動しました。それに入ると勢いよく噴射する水流で体が浮くのが楽しくて、まるで子供みたいに笑ってしまいます。この次はどの湯船に入ろうか、水流に身をゆだねながら思いを巡らせます。

一人っていいじゃない。いつもマイペースでいられるもの。さあ、のんびりと帰り支度をしましょう。

 

風呂から上がってホールに出ると、家族連れが傍らの食堂で、冷たい飲み物を飲んだり、食事をしていたりするのが目に入ります。そして、いつもおいちゃんが座って待っていたソファには、知らない男性が腰かけています。この人も奥さんを待っているのでしょうか?おいちゃんが私を待っていたように。

 

私は急に不安になりました。おいちゃん。おいちゃんがいない。まだ出てきていないのかしら?私は空いているソファに腰かけました。おいちゃん、長いお風呂だな。

 

おいちゃんが出て来ないことなんか、わかっているはずなのに。頭でわかっていても、気持ちがついていかないのでしょうか。

もうおいちゃんはいないんだ。諦めて外に出ました。背中を丸めて自転車に乗ると、夕闇の中を一人で家に向かいます。早く帰らなくちゃ。暗い夜道を女性一人で行くのは、自転車に乗っていても怖いものです。これからはもうちょっと近い銭湯に行くようにしよう。スーパー銭湯に行くのは回数券を使いきるまで。

もう、一人なんだから。

 

家に着くと、風呂道具を片付けてから、テーブルに向かいます。まず一杯、ビールを飲むのが楽しみです。プシュッ!グラスに注いでゴクゴク飲むと、ビールが体にしみわたります。ああ、おいしい!

テーブルの上には、おいちゃんが食事をしている写真を置いています。味噌汁のおわんと箸を持ったおいちゃんが、こちらに向かってほほ笑んでいる。

一人で食べる食事でも、十分おいしく食べています。だからおいちゃん、心配しないで。テレビを見ながらの夕餉は、もう寂しくはありません。

 

だけど、待つ人のない風呂上りは、今もなお、寂しいと思います。

 

 

Books

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