著書:わたしの葬式『心得手帳』
2019.12.08
今回は、「上質なサービス力の科学」7日間集中研修プログラム
3日目、「サービス力を高めるおもてなし」というテーマについてお話しします。
このブログ記事では、茶道をとおして上質なサービスを提供するために
さくら葬祭が継続的に行っている研修を公開していきます。
今回、第3日目研修を観終わった後は、サービス力において、「おもてなし」の重要性をご理解いただけるようになります。
さて、今回は最初に、サービス力を高める「おもてなし」の重要性について、茶道と歴史をとおしてお伝えします。
前回のブログ記事では、サービス力には4つの重要な要素「品格」についてご紹介させていただきました。
相手がいかに心地よく感じるかを考えながら行動することが、「品格」を身につける上で最も大切なポイントであり、正しい知識、正しいマナー、正しい日本語を身につけることによって初めて品格のある教養を得ることができるのです。
それでは、歴史が証明する「おもてなし」の重要性をお伝えします。
現在の政界、財界のおもてなしは、料亭、ゴルフ場で行われるようになってしまいましたが、古くは戦国時代から近世明治、大正、昭和の太平洋戦争以前までは「茶の湯」がおもてなしの重要な役目を果たしていました。
千利休が「茶の湯」を完成させましたが、同じ時代の信長、秀吉はじめ各武将たちはこぞってお茶をたしなむようになりました。
それが戦国武将の教養でもあったわけです。
利休の考案した畳1,2畳の究極に狭い空間に、味方だけでなく時には敵も招き、もてなす。
刀を脱ぎ捨て、息づかいも聞こえるほどの近さでのもてなしとはどのようなものだったのでしょう。
心打ちとけての心の交わり、人には言えない戦略の話、相手の腹をさぐりながら練る次なる作戦。国を動かすほどのおもてなしが行われていたに違いありません。
この狭い空間、小間(こま)と言います。
この茶室に入ると、多くの人がお母さんの胎内に入ったような感覚になると言います。
心も無防備になるわけです。
そんな時に不思議に相手の心が読めるときがあります。
さて、時代は移り、町人もお茶が楽しめるようになると商人、それも豪商と言われる人たちが「茶の湯」に熱を上げます。
資金力に任せ高価な茶道具を買い、お得意さんやお得意さんになってもらいたい人をもてなすのです。
商売繁盛のためには茶の湯のもてなしはかかせません。
同じ商売人同士、茶道具を自慢し合うこともよくありました。
このようなことで買い集められた道具は、代々受け継がれていきますが、その家が没落すると、また違う豪商がそれを買い取るといった具合に、家は没落すれども道具は引き継がれるといったシステムが出来上がっていきます。
この流れが茶道具の流出や紛失、破損を防ぎます。
明治維新、新しい国家創成のために必要とされた石炭、鉄鋼、鉄道、不動産などで莫大な利益を上げた事業家、そして財閥企業家の多くがお茶に傾倒し、あり余る資産で次々と高価な茶道具を収集していきます。
邸内や別荘に茶室をつくり、お互い茶人としてもてなしたり、もてなされたりします。
お茶の話はもちろんのことですが、大きな事業の相談や駆け引きなども行われたことでしょう。
戦後は財閥解体、企業も雇われ社長が多くなりお茶をたしなむ財界人は少なくなりました。
しかし、現在でも安倍首相はじめたくさんの政財界の方々がお茶を楽しんでおられます。
今は、仕事のやりとりとしてのもてなしの場ではなく、純粋に心の交流を図る場所となっているのかも知れません。
さて、皆さんは「いちざこんりゅう」という言葉、聞いたことありますか。
おいしいお菓子が手に入りました、クッキーを焼いてみました、ボジョレ・ヌーボーが手に入りました、こんな時あなたが家に友人を呼んでみたと想像してください。
せっかく来ていただくのだから掃除はしておこう、花の一輪でも飾っておこうかな、新しいテーブルクロスにしてみよう、そしてケーキにはコーヒー、あとで紅茶も飲んでもらおう・・・
いかがでしょう?
私は以前、こんなふうに気軽に友人をよんで、負担にならない自分のできる範囲のおもてなしをしていました。
で、当日友人が来ました。
ピンポーン。「こんにちは、早く着いっちゃった」
えっ、まだ約束の時間より20分も早い。
どうしよう、まだ着替えてもいない・・・
あわてふためいて、あっいけない、コーヒーカップ落として割っちゃった。
あるいは、「どうしたのだろうか。連絡ないけどもう30分も過ぎてる。コーヒー煮詰まっちゃう。」などということはよくあることです。
でもスタートからこれでは何だかへこみますよね。
そしてケーキとお茶タイム。
「どうぞ召し上がれ」
「これは何?」
「かぼちゃを使ったモンブラン」
「え、私かぼちゃきらいなの。知らなかった?」
「・・・・」
まあ、これは極端な話ですが、これではおもてなしも何もあったものではないですね。
お互いに相手を思いやる気持ちが足りていません。
時間にルーズなのは言語道断ですし、せっかく用意してくれたケーキにいちゃもんつけるのもよくはないですが、事前にケーキの好みを聞いておかなかったもてなすサイドもいけなかったですね。
双方のちょっとした心配りでもっと心に残るおもてなしタイムが実現したはずです。
早くつきそうでも、「今、行ったらまだ掃除しているかもしれないな。ちょっと時間つぶそう」と相手の都合を考えます。
もてなすサイドも、友人の好みをリサーチしておいて、好きなものをお出しするようにしましょう。
こんなことだけでもグッと違います。
時間どおりに来てくれただけでもうれしい。お友だちは好きなケーキを食べられること、好物を覚えていてくれたこと、二重にうれしい。
すると、素敵なコーヒーカップやきれいな花にも目がいくゆとりができるでしょう。
そして、お互いお世辞でも何でもなく、
「ケーキおいしかった。お花も飾ってくださって。私のためにありがとう」
「久しぶりだから、あなたの好きなケーキ買ってきました。喜んでくれてうれしいです」
という会話が成立するのです。
こうして、もてなす側ともてなされる側双方がお互いを思いやりながら、この場をよいものにしょうとすることを「一座建立」(いちざこんりゅう)というのです。
おもてなしの原点ですね。
以上、本日は上質なサービス力を高める4つの要素のひとつ「おもてなし」の重要性、
そして「おもてなし」の原点を最も大切なポイントを凝縮してお伝えしました。
次回は、「サービス力に必要なスキル」について、お話をしていきます。
葬儀についての資料を
ご送付いたします。