納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.06.06

故人のカルテ13 お身体の負担を考えたお棺の選び方 その②

故人のカルテ13 お身体の負担を考えたお棺の選び方 その②

おくりびとの想い~

 

やすらかに眠っている姿にしてさしあげたい。

ご負担なく、心地よく、最後の時間までやすんでいただきたい。

 

色とりどりのアジサイがみられるようになりました。

もうすぐ梅雨本番。

スーツが雨に濡れることを気にしていられない仕事なので、風邪をひかないように、今一度気を引き締めて過ごしてまいります。

 

前回、お棺の選び方として、基本となるサイズのお話しをいたしました。

故人のカルテ12 お身体の負担を考えたお棺の選び方 その①

http://sougi-sakura.com/blog/makeup/coffin_1/

 

「体格に合ったサイズを選ぶ必要があるのはわかります。

素材や装飾などの見た目以外に、なにがどう違うの?」

 

皆さまからすれば、棺は棺。

どれも同じように見えると思います。

 

お棺は、大切な方々と最後を過ごすときの居場所です。

 

荼毘にふすための、一時的な、残らないものでもあります。

 

ただ、故人のお身体のご処置を行う私たちからすると、お棺は、「亡くなられた方のお身体を死後変化から守るもの」という認識です。

 

お棺の構造の違いで変わることがいくつかあります。

 

注目すべき点は、「ふた」の構造です。

 

形で大きく分けると、平棺、山型棺、インロー棺の3種類があります。

(組み合わせもあります。 平インロー棺、山型インロー棺等)

 

平棺は、平らな板が、「ふた」として、棺本体の上にのっているものです。

長い箱という印象でしょうか。

一番シンプルな構造です。費用も抑えられます。

 

 

山型棺は、字のごとく、「ふた」が盛り上がっているものです。

曲線を描くような構造のものを、アール棺、ドーム棺ともいいます。

棺本体と合わさる部分に、凹凸があり、平棺よりしっかり閉じます。

 

 

インロー棺は、水戸黄門がかざす印籠(いんろう)のように、「ふた」が棺本体にかぶさるようになっているものです。

立派なものになればなるほど、すーっと密着するように閉じる事ができます。

 

 

「ふた」としての能力、つまりお棺の気密性は、

平棺 < 山型棺 << インロー棺 となります。

 

また、どれも木製です。

木は、湿度によって膨張し、収縮する性質があります。

 

ご安置が日延べになると、結露の影響もあって、ゆがみが発生します。

特に平棺は、板が上にのっているだけなので、反り上がりやすく、気密性がかなり低下します。

 

腐敗が進行している場合、おすすめしたくありません。

ドライアイスの冷気が逃げるだけでなく、臭いもご家族に伝わってしまいます。

 

そして最も注目すべき点は、「ふた」の違いによる「棺の高さ」の問題です。

 

寝ている状況に「高さ」??と思われるでしょう。

 

以前、故人のカルテcase06にも記載しましたが、亡くなると、口は自然と開きます。

故人のカルテ06 口が開く理由 その③

http://sougi-sakura.com/blog/makeup/karte06_3/

 

人間の体の構造上、顎を引いた姿勢でやすんでいただくと、お身体に負担なくお口を閉じてさしあげることができます。

 

顎をひいて(お口を閉じて)、お棺の上部にある小窓から覗いてご面会ができるように、その人に合った枕の高さに調節してご納棺しております。

 

しかし、拘縮(こうしゅく)がある場合、棺本体の高さを超えてしまうことが多々あります。

 

拘縮とは、生前からの身体の硬直のことです。

背中が曲がっていたり、足が寝姿勢のまま横を向いていたり、動かせず、解くことのできない硬直のことです。

 

例えば、亡くなられた方の背中が曲がっているとします。

顎を引いた姿勢をとりつつ、ご納棺してさしあげようとすると下図のようになります。

 

 

このまま、曲がった背中がお棺の底に当たる位置へお連れすると、顎を引いた姿勢を続けることができず、お口が開きます。

 

お棺の種類が平棺であれば、点線の位置に「ふた」がまいります。

 

山型棺であれば、「ふた」に「高さ」があるので、お棺の壁側に頭部が近づくように少し移動していただきますが、小窓からご面会できるように、棺本体の高さを超えてもご納棺してさしあげられます。

 

平棺であっても、背が低く下半身に拘縮がなければ、腰元を上げて、膝を曲げることで、下図のようにご納棺してさしあげられます。

 

 

 

背の高い方(もも~膝が長い方)や、下半身にも拘縮がみられる場合、下図のように、平棺にご納棺すると膝が棺本体の高さを超えて、「ふた」を閉じることができません。

 

これは、ほんの一例です。

 

顎を突き上げるように首が固まっていたり、顔だけ横を向いていたり、体育座りをしているように膝が曲がっていたり、それが横向きだったり・・・

お身体に生じてしまう拘縮の様子は、その方の生活によって様々です。

 

色々なデザインのお棺がありますが、「見た目」が全てではありません。

その構造には、それぞれ必要な「機能」が備わっています。

 

また、お棺のお布団の下には、枕だけではなく、納棺師の腕と努力も詰まっております。

 

しかし、シンプルなものであるがために、対応しきれないこともあります。

 

お棺を選ぶ際には、費用との兼ね合いも大切ですが、お身体のご負担と、構造上の問題も考慮しなければなりません。

 

【故人のカルテ】 お棺を選ぶポイントとご納棺時のポイント

  • 体格によるサイズ以外に、腐敗や拘縮などに対応できる機能を持ったお棺がある
  • ご安置場所とその期間によっては、お棺に湾曲が生じるため、状態によっては密閉するお棺が必要となる
  • ご納棺時、その方に必要かつ最適な体位があるので、枕元の調節を行う
  • 平棺の場合、枕元の調節だけでは「ふた」を閉じられないことも多々ある
  • 口元の様子は、その人らしさに大きく関与するため、状態の説明とともに、ご納棺時お体を動かすことを考慮して綿詰め等のご処置を行う
  • 拘縮の度合いによっては、お棺の種類もご家族へご提案する必要がある

 

Books

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