納棺師が綴る『故人カルテ』
2016.07.02
おくりびとの想い~
愛用品に囲まれて。
お身体に負担なく無事に旅立っていただきたい。
毎日暑い日が続いております。
保冷施設内でご処置を行ったあと、外に出るとクラクラします。
ドライアイスが直下にしか効かない現実に、ご自宅でご葬儀を待つ方のお身体が心配でなりません。
長期安置とドライアイスの幻
⇒http://sougi-sakura.com/blog/makeup/dry-ice/
「お棺に入れられるものは、どんなものですか?」
注意事項として、こちらからお伝えすることが多々ありますが、ご家族からも必ず聞かれる質問です。
お棺に入れて差し上げ、故人に持って行っていただくものを「副葬品」と言います。
世界各国様々な「死後の世界」の考え方がありますが、原人の頃より死者を弔うために「副葬品」を持たせてきました。
また、「死」の原因がわからなかった時代、残された者が「魔除け」として、様々なものを持たせる風習が生まれました。
現代は、宗教的・地域的な風習で入れるというよりも、ご家族のご意向で入れるものを選ぶことが多くなっております。
ただ、今の日本は火葬の国です。
「火葬場の業務に支障をきたすもの」をお棺の中に入れることはできません。
火葬場はなくてはならない施設なのに、駅や生活環境近くに建てようものなら、建設反対運動が激しく、僻地でさえも新しく建設することが非常に困難な施設です。
公害ガスや臭いなんて出してしまえば、稼働停止もありえます。
関東都市部では、煙突から煙が上がるところが見られる昔ながらの火葬場となると、西寺尾火葬場(横浜市)くらいになりました。
技術の進歩により、フィルターで限りなく無害化して排気していますが、棺に入れたものによっては、ダイオキシンなどの有害物質の発生は避けられません。
避けるべきものその① 石油化学製品
プラスチック製品、化学繊維の衣類、カバン、靴、寝具、発砲スチロール、CD、ゴルフボールなど
これらの中には、爆発や溶けた物質の付着など、火葬炉を損傷させるものもあります。
ひとたび火葬炉が改修工事となると、使用できる火葬炉が減った状態が続き、日延べを余儀なくされます。
公営斎場であれば、多額の税金がつぎ込まれます。
避けるべきものその② 爆発物
カーボン製品(釣り竿、杖、ゴルフクラブなど)、電池、ライター、スプレー缶、缶飲料、ペースメーカー、メロン、スイカ、竹など
関東では、ご遺骨を全て持ち帰る「全骨収骨」が原則です。
ご遺骨が少ないことを気にする文化でもあります。
入れたものが多ければ、それだけご遺体の火葬に負荷がかかり、ご遺骨の量が減ります。
また、金属やガラスなどの不燃物とご遺骨が合体して、収骨できないご遺骨も生じます。
メガネやアクセサリーは、火葬後お骨壺に入れてさしあげてください。
さけるべきものその③ 不燃物
時計やベルトのバックル、硬貨などの金属製品、茶碗や瓶などのガラス製品、アクリル樹脂製品、入れ歯など
「木だからいいでしょ?紙だからいいでしょ?」
木でも紙でも燃えにくいものがあるのです。
残念ながら、燃えにくいものも入れられません。
一番ご家族がびっくりされるのは、雑誌・小説です。
火葬の際、舞い上がりすべて燃えません。
火葬後のご遺骨の上に、燃え残った紙くずが大量に散らばります。
さけるべきものその④ 燃えにくい可燃物
位牌、表札などの厚みのある木材製品、雑誌・小説などの多量の紙、大型のぬいぐるみ、果物、ろうそくなど
「えっ!こんなにダメなの? ○○の葬儀の時は・・・」
時代に沿って環境基準が厳しくなるとともに、火葬炉のシステムも変わりました。
ご家族が知らないところで、私たち葬儀社の人間は火葬場の職員に怒られているのです。
故人への奉げ方として、お棺に入れることがすべてではないと思います。
死後、四九日の間旅をする仏教徒であれば、七日ごとに行われる裁判があります。
その裁判では、遺族からのお供え物が裁判所に届き、情状酌量の判断基準になると言われています。
ご自宅にお身体をご安置している間はもちろん、ご遺骨となって帰られた際もお供えしてさしあげる。
好きな飲み物や食べ物を、こまめに交換してさしあげる。
似合っていた服装の話を家族でする。
お骨となられてからも好きな曲を聴かせてさしあげる。
新刊が発行されたら、お供えしてから読む。
大事に使っていたものは、ご家族が継いで使う。
供養のカタチは様々だと思います。
残念ながら、不用品処理の場とする方がいらっしゃるのも現実です。
故人のお身体にご負担がかからないようにしてさしあげることも大切だと思います。
【故人のカルテ】 副葬品の選び方
葬儀についての資料を
ご送付いたします。