納棺師が綴る『故人カルテ』
2016.02.08
おくりびとの想い~
やすらかに眠っている姿にしてあげたい。どこか微笑んでいるような姿に。
立春も過ぎて、梅の花が咲いているところをよく見かけるようになりました。
子供の頃、桜と梅の違いがわからなかったのに、いつから一目で気づくようになったのかな…なんて思いながら、今日もご処置を待つ方のご自宅へ向けて運転しております。
「口が開いているの!なんとかしてください!」
開口一番、そうおっしゃるご家族にたびたびお会いします。
亡くなった方にご自宅で休んでいただくということは、亡くなってから生じるお体の変化を見る事であり、ご家族が亡くなったという事を実感させられる事でもあります。
季節を問わず、保冷施設でお休みになっている方よりも、その変化は早く、多彩に生じます。
死後変化の中で、口が開くことは、当たり前の現象です。
人間の体のつくりから、口が開いてしまう3つのパターンがあります。
今日は、その1つをお話しします。
その① 口が開いていなかったのにだんだん開いてきた
病院や施設の方々に「エンゼルケア」と呼ばれる処置をしていただきますが、その多くがお体のご移動の際の体液の流出を防ぐためのものです。
一時的に口が開かないようにしています。
喉の入り口から舌の上に綿を詰め、頭から顎にバンドを巻いて固定していることが多くみられます。
時間が経過して死後硬直が解けるとともに、当然口が開いてきます。ご自身で口を動かすことができないため、重力によって顎が下がり、口が開きます。
下顎を支えるように、綿を詰め直してさしあげます。
口が開くと口角が下がるため、含み綿をして表情を戻してさしあげます。
「お父さんちょっと笑ってるね。 いい顔してる!」
家族が明るい話声に変わります。
故人に安心して旅立っていただくために、辛い時だからこそ、残された家族が笑顔になっていただく瞬間が必要だと思います。
【故人のカルテ】 処置のポイント
・肌にバンドの痕がつくので、痕が戻らなくなる前にバンドを外す
・バンドの痕がみられる場合、ご遺体専用の保湿クリームでマッサージをする
・喉の奥から左右の下顎の骨の付け根に綿を詰める
・頬に綿を詰めるだけでなく、綿で歯を作成し、口角が上がるよう調節する
葬儀についての資料を
ご送付いたします。