納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.02.08

故人のカルテ04 口が開く理由 その①

故人のカルテ04 口が開く理由 その①

おくりびとの想い~

やすらかに眠っている姿にしてあげたい。どこか微笑んでいるような姿に。

 

 

立春も過ぎて、梅の花が咲いているところをよく見かけるようになりました。

子供の頃、桜と梅の違いがわからなかったのに、いつから一目で気づくようになったのかな…なんて思いながら、今日もご処置を待つ方のご自宅へ向けて運転しております。

 

「口が開いているの!なんとかしてください!」

開口一番、そうおっしゃるご家族にたびたびお会いします。

 

亡くなった方にご自宅で休んでいただくということは、亡くなってから生じるお体の変化を見る事であり、ご家族が亡くなったという事を実感させられる事でもあります。

季節を問わず、保冷施設でお休みになっている方よりも、その変化は早く、多彩に生じます。

死後変化の中で、口が開くことは、当たり前の現象です。

 

人間の体のつくりから、口が開いてしまう3つのパターンがあります。

今日は、その1つをお話しします。

 

 

その① 口が開いていなかったのにだんだん開いてきた

 

病院や施設の方々に「エンゼルケア」と呼ばれる処置をしていただきますが、その多くがお体のご移動の際の体液の流出を防ぐためのものです。

一時的に口が開かないようにしています。

喉の入り口から舌の上に綿を詰め、頭から顎にバンドを巻いて固定していることが多くみられます。

 

時間が経過して死後硬直が解けるとともに、当然口が開いてきます。ご自身で口を動かすことができないため、重力によって顎が下がり、口が開きます。

 

下顎を支えるように、綿を詰め直してさしあげます。

口が開くと口角が下がるため、含み綿をして表情を戻してさしあげます。

 

「お父さんちょっと笑ってるね。 いい顔してる!」

家族が明るい話声に変わります。

故人に安心して旅立っていただくために、辛い時だからこそ、残された家族が笑顔になっていただく瞬間が必要だと思います。

 

 

【故人のカルテ】 処置のポイント

・肌にバンドの痕がつくので、痕が戻らなくなる前にバンドを外す

・バンドの痕がみられる場合、ご遺体専用の保湿クリームでマッサージをする

・喉の奥から左右の下顎の骨の付け根に綿を詰める

・頬に綿を詰めるだけでなく、綿で歯を作成し、口角が上がるよう調節する

 

 

Books

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