納棺師が綴る『故人カルテ』
2016.02.14
おくりびとの想い~
やすらかに眠っている姿にしてあげたい。どこか微笑んでいるような姿に
神奈川県愛川町にある「愛川聖苑」でのお仕事でした。
土砂降りから一転、見事な晴れ空。三田陸橋から丹沢山系をバックに大きな虹が弧を描いておりました。春らしい暖かい風にのって、良い旅立ちとなられたことをお祈りいたします。
前回、人間のからだのつくりから、亡くなられた方の口が開いてしまう理由の1つをお話ししました。
⇒http://sougi-sakura.com/blog/makeup/karte04_01/
今回は、2つ目をお話しいたします。
その② 口が半開きになっている 唇が合わさらない
ほとんどの方が、亡くなったとき口が半開きの状態です。
それが自然な状態だからです。
痛みから、歯を食いしばって口元に力を入れたまま亡くなられた方は別ですが。
大きく口をあけて、噛んでみてください。
歯がカチっと合わさったとき、あなたの唇は合わさってますか?
石原さとみさんや、井川遥さんのようなふっくらした唇の方以外は、唇が離れているはずです。
子供の頃、「クチャクチャ音をたてて食べない!」
「口が開いているとバカな子と思われるでしょ、閉じなさい!」など、親から言われたことはありませんか?
日本語に、「口を結ぶ」「唇を結ぶ」という表現があるように、口は開いているものです。
意識をして閉じるものです。
唇がつるつるとした歯の上で滑らないよう、薄くした綿をのせて摩擦部分をつくり、唇を閉じます。
長期間入れ歯をはめないで過ごしたために、入れ歯が合わなくなり、噛み合わせが悪い場合や歯が出ている場合は、綿で入れ歯の代わりをつくり、唇を閉じます。
乾燥によって唇の水分が減り、薄くなってしまった場合や歯茎が出っ張っている場合、引っ張って合わせると違和感が生じます。
表情も変わってしまいます。
その方らしい姿でおやすみいただくためにも、無理に口を閉じないことも大切です。
TVドラマで、やすらかに亡くなったご遺体を演じる方は、唇までしっかりと閉じた演技をされます。
他の方のご葬儀でお会いする時には、すでにご処置を済ませており、口は閉じてあります。
大切な家族が亡くなられた時、口が開いていることに慌てるのも無理はありません。
ただ、口が開いているということは、痛みもなくやすらかに亡くなった証でもあります。
【故人のカルテ】 処置のポイント
葬儀についての資料を
ご送付いたします。