納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.01.11

冬場における故人のお体

日差しのある所は暖かいですが風は冷たく、息が白くなる冬らしい日が続いております。

亡くなられた方には良い季節と思われるのですが、そうとも限りません。

まずは「乾燥」。

お風呂からあがってすぐ保湿をしても、なんだかつっぱってくるこの季節。

元気な私たちがそんな状態なのです。

 

亡くなられた方の肌は自分で潤すことも油分を出して守ることもできません。

湿度の高い夏場よりも早く体から水分が奪われ、痩せてみえてしまいます。

日にちが経過するに従って目の周り、こめかみ、頬骨付近など肉付きの薄い部分が顕著にくぼみます。

綿の詰めようがない骨の上です。

顔の印象も大きく変化します。

奪われてしまった皮膚の奥まで水分を戻すことは難しいのが現状です。

棺の中へお連れして(ご納棺)乾燥しきった空気から守ることが重要になってきます。

そして「暖房」。

外は冷たいかもしれませんが、台所やリビングで温まった空気は人の移動と共に移動します。

亡くなられた方のお休みになっている部屋も冬だから大丈夫というわけにはいかないのです。

夏場と同じように、日差しが当たるようなら雨戸を閉めてクーラーをかけてください。

夜には外の冷たい風を部屋へ送ってさしあげてください。

亡くなってしまうと何も言えないけれど、その声はお体に変化を起こして訴えかけます。

 

ゆっくりと自宅で休んでいただけるように。

 

そして無事に変わらぬ姿で旅立てるように。

 

 

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