納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.03.30

故人のカルテ08 感染リスク

桜が日に日に満開に近づいてきておりますね。

 

そろそろ冬用コートをクリーニングに出さなければと思うのですが、夜の時間帯も仕事があるため、まだまだしまえそうにありません。

 

先日、冷たい雨が降る夜、ある病院へ亡くなられた方をお迎えにあがった時です。

病室前の廊下で、ご家族にご挨拶をいたしました。

 

皆さまおそろいのマスクをされておられました。

 

同席している3人の看護師も同じマスクをしておられます。

 

よくよく見ると、N95規格のマスクです。

 

立体で、カポっと覆って、頭の後ろでヒモを縛って固定させる、しっかりとしたものです。

 

花粉症の季節、街でよく見かけるサージカルマスクではありません。

 

お出かけに不向きな見た目のものです。

 

ストレッチャーを運び入れ、ご搬送するよう看護師より伝えられます。

いつもの対応です。

 

私たち葬儀社の人間以外、全員防護マスクをしている状況です。

 

感染症を患って、亡くなられた事が推察されます。

 

いつものように、病名も特段お話しになりません。

(亡くなられた方の正式な病名を知るのは、死亡届に付随する死亡診断書に目をやった時がほとんどです。)

 

「結核ですか?」と、伺って初めて、「そうです」と、教えてくださいました。

 

病気の種類にもよりますが、生きている方からの感染に比べると、ご遺体からの2次感染リスクは低いとはいえ、ゼロではありません。

 

【結核の場合】

亡くなる前に咳やクシャミをして、顔や髪、寝具や洋服に結核菌が付着しています。

また、ご処置の際には、綿詰め等で体内の結核菌が空気中に排出されます。

 

私たち葬儀社の人間にとっては、飛沫感染だから大丈夫というわけではありません。

 

医療現場の方々は、コンプライアンスの問題で伝えられないのかもしれません。

 

ただ、「配慮」はあっても良いと思います。

 

冷たい夜でした。

 

【故人のカルテ】 結核のポイント

  • 飛沫感染であるため、ご家族は安全であることを伝える
  • 舌が気道をふさぐため、排菌しづらい状況ではあるが、すでに付着している状況もあり、遊離した結核菌を吸い込まないよう、有効なマスクを使用す
  • 触れる部分の消毒、着衣等は、日光消毒を利用し、滅菌を心がける

 

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