音楽葬
2022.07.21
本日は、海外のお葬式の様子をお伝えいたします。
先日、さくら葬祭スタッフがタイでのお葬式に参列する機会がありました。さまざまな形式のお葬式を執り行ってまいりましたが、海外でのお葬式を体験できる機会は、葬儀社の人間といえどもそうそうありません。
滅多にない経験でしたので、写真も交えながらそのときの様子をご紹介したいと思います。
タイのバンコクで行われたご葬儀ですが、タイは国民の95%が仏教徒ですから、もちろん仏教式のお葬式になります。
タイの仏教はスリランカやビルマなど南方を経由して伝わった上座部仏教(小乗仏教)といいます。戒律を重んじ、出家して修行を積むことによってのみ悟りに達することができるという教えです。
これに対して日本の仏教は大乗仏教といいます。中国や韓国を経由して北方から伝わった仏教で、どんな人でも悟りを開けると説きます。
タイでは日本のように喪服を着るという習慣はありませんが、黒い服が望ましいとされています。とはいえ、暑い国だからでしょうか、色は黒でもわりとラフな格好をした方もいらっしゃいます。
今回のご葬儀は、3日間行われました。奇数日の数日間(3・5・7日間)という決まりがあり、有名だった方ほど、日数が長くなる傾向があります。この期間中は、いつ弔問してもかまいません。
基本的に、通夜・告別式の2日間で終わる日本とは違う点ですね。タイにはお墓がありませんので、後日、お墓参りをするということがありません。ですからできるだけこの期間中に訪問することになります。
しかし、常夏に近い暑い国で、それだけの長い間ご遺体をおいておけるのか?と思いますが、祭壇や棺に冷蔵設備が施されているため、火葬までなにごともなく安置して置けるのだそうです。
お葬式は寺院で行われますが、火葬場が併設されている点も日本との違いです。
今回は多くの方がマスク姿で参列されていました。僧侶はマスクもオレンジ色なのが印象的でした。
コロナ禍ということもありましたが、総勢300名以上の大きなお葬式でした。
日本ですと、最近は身近な人だけで行う家族葬が増えていますが、タイでは親類縁者、近所の人などたくさんの人が訪れて盛大にお葬式を執り行います。
余談ですが、タイでは女性は僧侶に触れていけないことになっています。むやみに近づいたり、話しかけたりすることは避けなくてはなりません。
そんな中、最終日にはなんと音楽葬も行われました。タイのお葬式では、民族楽器を使って古典音楽が演奏されることもありますが、この日はバイオリンとチェロとトリオでの演奏でした。
音楽葬は10曲以上流れ、約1時間も演奏されました。
華やかに飾られた祭壇の隣で奏でられる音楽は、心に響く温かみのあるものでした。やはり、CDを流すだけの音楽とは違い、生演奏は迫力があります。
国は違えど、音楽葬は世界共通のスタイルなのですね。参列された方は、素晴らしい生演奏とともに故人様の思い出が胸に刻まれたことと思います。
この日演奏された曲は、故人様の好きな曲だったのでしょうか、それとも家族との思い出の曲だったのでしょうか。
いずれにしても、この先、この日に演奏された曲を耳にするたびに、故人様のことを思い出すでしょう。音楽葬とはそういうものです。
また、最終日ということもあり、タイの伝統文化である人形劇が演じられました。
お題は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」です。この物語は文字ではなくサンスクリット語で語り継がれてきたもので、主人公の王子ラーマが魔王に奪われた妻シータを奪い返すという冒険物語です。
タイでは、お葬式の終盤にこのような人形劇が演じられることがあります。故人様への最後のはなむけとして、にぎやかにそして盛大に音楽やパフォーマンスでお見送りをするというのは、いかにもタイらしいですね。
タイらしい素晴らしい葬儀にスタッフは感激していました。
故人を見送る想いは世界共通ですね。
タイの仏教は輪廻転生を信じていますから、亡くなったことを悲しむだけでなく、次の生への旅立ちと考え、「おめでたいこと」ととらえています。日本のように「しめやかに」という雰囲気とは違い、明るく故人を偲びながら新たな生への希望も感じられるお葬式でした。
今回は海外でのお葬式でしたが、お客様のニーズは時代とともに変化していきます。さくら葬祭も葬送儀礼の文化を継承しつつ、新しい形の音楽葬もご提供できるよう日々努力してまいります。
葬儀についての資料を
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