音楽葬
2017.05.03
故人(奥様)が闘病生活の中で「お葬式の希望」を記された一冊のノート。
最後の力を振り絞って記されたことは、その筆跡をみてもわかります。
ご家族と一緒に、書き記されたノートを拝見すると下記のキーワードが出てきました。
故人の「想いをカタチ」にした葬儀スタイルは音楽葬です。
お葬式のテーマは、ご家族と話し合い「故人をプリマ・バレリーナとしてお見送り」です。
献奏曲は、故人のご次男さまによる、ブラームス Op.118-2 Intermezzoのソロ演奏。
彼は3歳からピアノを弾いていらっしゃるとのことです。
献奏を受けて、ブラームスの「ホルントリオ」を演奏しました。
この曲自体は大変有名でよく演奏されますが、第3楽章がブラームスの母親が亡くなった際に書かれた「葬送の曲」であることはあまり知られていません。
ホルン三重奏曲が完成したのと同時に母親が亡くなったため、ブラームスは当初でき上がっていた第3楽章を差し替え現在のような形にしました。
このように完成後に一つの楽章を丸々差し替えることは音楽史上まれなことです。
全楽章の中でもこの楽章だけが異質です。ブラームスがこの曲を単独で発表せず、あえてホルン三重奏曲の中に入れた意味は計り知れません。
「標題音楽」を好まなかったブラームスがこのようなストーリー性のある音楽を書いたことも異例のことです。また、第3楽章の主題にはドイツの古いコラール「愛する神の導きにまかすもの」が用いられ、より重厚な対位法で書かれています。
これらのことは母への強い想いの表れであると言えます。
弔電拝読後には「亡き王女のためのパヴァーヌ」を献奏しました。
「レッスン中のその美しい立ち振舞いはバレリーナのかがみでした」
「優雅に踊っている姿だけが心に浮かびます」
この一文を受けての献奏です。
想い出の曲は「美しき青きドナウ」です。
バレエの発表会時の曲とのことでした。
「美しく青きドナウ」は、ヨハン・シュトラウス2世によって1867年に作曲されたワルツです。
ヨハン・シュトラウス2世(Johann Strauß II/1825-1899)は、19世紀におけるオーストリアのウィーンで活躍した作曲家・ヴァイオリニスト。
生涯の多くをワルツの作曲に捧げ、「ワルツ王」と評されています。
「オーストリア第二の国歌」、「シュトラウスの最高傑作」と讃えられています。
カルテットでの「美しく青きドナウ」の演奏中には、式段中央のスクリーンで故人の踊る姿が映し出されます。
お葬式は「故人が主役」と云われることがよくあります。
故人の「想いをカタチ」にし、「 プリマ・バレリーナ」としてお見送りしたお葬式です。
葬儀についての資料を
ご送付いたします。