なずな日記
2018.08.23
先の記事でも申し上げましたが、私の生まれ育った家では、お盆やお彼岸の行事などは全くしていませんでした。父は長男ではなかったし、あまりそういったことに関心もなかったのです。
しかし、今回亡くなったのは誰あろう私の父です。そうなると命日やお盆のことは気になるものです。
ふとした縁から、某宗派の尼僧と知り合いになりました。在家の方なので有髪です。見た目は普通の女性と変わりませんが、さすがに先祖の祀り方や行事のことを相談すると的確な答えが返ってきます。お盆のことも聞いてみました。今まで何もしていなかったけれど、どうしたらいいのでしょうか。
「一度総供養をするといいわ。菩提寺のお坊さんに相談してみたらどうかしら」
菩提寺と言っても、墓の管理者である叔母から、
「うちは天台宗よ」
と聞いただけで、一度も行ったことはありません。
「うちの菩提寺はお布施が高いから、別のお寺で頼んじゃったこともあるわ」
などという話もその叔母から聞きました。
それならば宗派は違いますが、知らない坊さんに総供養をお願いするより、知っている方の方がいいと思い、この尼僧に総供養をお願いすることにしました。
「戒名はわかる?」
「いえ、父の戒名はつけませんでした。他の親戚には会ったこともありませんのでわかりません」
うちは親戚付き合いがほとんどありません。ですので、どんな人がいるのか気になっていました。
当時はまだ生きていたおいちゃんが、家系図を作っているのを見て、私も家系図を作りました。だから、こういう人がいる、と言うのは、名前だけはわかっています。
「その家系図のコピーを貰うわ。生きている方も亡くなった方も一人一人、名前を書いたお札を作りますから」
先祖すべてを供養するのが総供養だそうです。戸籍謄本を取り寄せて作ったのでせいぜい江戸時代後期くらいの方までしかわかりませんが、それでも数十人はいます。
当日は尼僧の家で総供養をすることにしました。お経とともに先祖代々の方の名前を一人一人読んで供養をします。2時間くらいかかったでしょうか。
今まであまり先祖のことを顧みませんでした。でも、こんな風に名前を読みあげていただくと、少しだけ身近に感じられるような気がしました。ご先祖様方、この祈りを捧げます。そんな気持ちで手を合わせました。
その翌日の夜のことでした。
食事を終えた私は夏のことで暑かったからなのか、洗濯物でも干そうと思ったのか、今となってはどうしてベランダを見に行ったのか憶えていません。しかし、とにかくベランダに行ったのです。すだれに一頭のアゲハ蝶がとまっているのを見つけました。
わあ、珍しい!
私はデジカメを持って来て、アゲハ蝶を撮影しました。フラッシュがバシバシ光ったというのに、アゲハ蝶は気にせずじっとしています。
「おいちゃん、アゲハ蝶だ!アゲハ蝶がすだれにとまっているよ!」
私はおいちゃんに声をかけました。
「どれどれ」
おいちゃんは、のっそりとこっちに来て、アゲハ蝶を見ました。
「本当だ、全然逃げないね」
「寝ているのかしら」
翌日の朝、ベランダに行くとアゲハ蝶の姿はなくなっていました。
お盆になると、先祖の霊はアゲハ蝶になってこの世に来ると言います。だからお盆に虫を殺してはいけないと言われます。
あのアゲハ蝶は、父の霊だったのか、あるいは先祖の霊だったのか。いずれにせよ、総供養を喜ばれて、お礼に来たような気がします。
それ以来、夜のベランダでアゲハ蝶を見かけることはありません。
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