なずな日記
2018.09.13
用意のいい人は生前にお墓を買っておくものですが、経済的な事情や、まだ先の話だからとお墓のことなど考えない場合もあるかと思います。
父も自分のお墓のことは考えていなかったようです。
「何をやっているんだか。86にもなって自分は死なないと、思っていたのかしら?」
お墓がない…私は頭が痛くなりました。
長男なら先祖代々のお墓に入れますが、父はそうではないのでお墓を捜さなければいけません。
「どうしよう…」
私達は女きょうだい二人です。私には子供がいないし、妹の子は女の子なのでいずれお墓を継ぐ者はいなくなります。
後継者がいなくても済む、いい方法はあるかしら?
検索しているうちに、明るい海の写真が載った葬儀社のホームページを見つけました。
「新しいお墓の形、海洋葬」
海洋葬は、遺骨を埋葬するのではなく海に散骨します。骨はパウダー状にして漁場などに迷惑をかけないよう、遠くの海に散骨するそうです。
「これなら面倒がなくていいわ!」
費用もそんなに掛かりません。父は海が好きだったし。
私は妹に電話をして、海洋葬の話をしました。
「3人までこの金額で乗船できるそうよ。だから私とさつきさんと、ももちゃんの3人でどうかしら?」
さつきは私の妹で、ももちゃんと言うのは妹の子供です。
「えっ!海に流すの?それはちょっとひどいんじゃないの?」
「何がひどいのよ!死んだら自然に帰る、いいことじゃない!」
しかし、妹の大反対によって、海洋葬は却下されました。
「う~ん、どうしたらいいの?」
当時の私は切羽詰まっていたようです。父の遺骨をどうにかしなければいけない。どうにかできればどうでもいい…
パソコンで検索するだけでなく、図書館で本を借りて調べました。
調べてみた結果、跡継ぎがいないという問題は、我が家に限ったことではなく、多くの人が抱えていることがわかりました。
そのための解決法として、永代供養墓がありました。永代供養墓は、跡継ぎがいなくなった後も、霊園側で墓の手入れや、供養をしてもらえます。
普通のお墓のように墓石のある永代供養墓もありますが、その他に樹木葬、納骨堂形式の永代供養墓などがあるそうです。
私の住んでいる所から、2駅ほど離れた所に、納骨堂形式の永代供養墓があるのを見つけました。お寺さんが直接運営していて、納骨堂も境内の中にあります。さっそく妹と一緒に見学に行きました。ご住職にも会って話を伺い、ここなら安心と判断しました。
この永代供養墓では10年~30年、納骨堂に安置した後、お寺の中にある合葬墓に納められます。費用は納骨堂に安置する年数によって変わります。10年なら20万円、20年なら35万円、30年なら50万円で、他の費用は一切かかりません。
当時私は、いつまで生きるかわからないと思っていたので、とりあえず10年間、納骨堂に安置してもらうことにしました。
これでずっと安心できる。そう思いましたが…
私事ですが、私は今年、千葉から神奈川に引っ越しました。千葉に置いてきた父の遺骨を、どうしようかと思案しています。永代供養墓だから、そのままでも構わないのですが、こちらの都合で父には縁もゆかりもない土地に一人、取り残す形になってしまいました。それもかわいそうな気がするのです。お参りも今まで通りという訳には行きません。
亡くなった人は、そんなことは気にしていないかも知れません。しかし、生きている者にとっては、とかくお墓には悩みが尽きないもののようです。
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