なずな日記
2019.01.10
今年の年末年始は家で過ごすことにしたのだが、母が来る。母は高齢者施設に入居しているからこれは、外泊と言うものだろう。
「年越しそばは持って行くわ。おいしいのを見つけたの」
「そうなの?よろしく」
駅に着いたという母を迎えに待ち合わせ場所に向かった。しかし、待ち合わせ場所に母の姿がない!
こんな時、携帯は便利。
「もしもし、お母さん?どこにいるのよ?ユニクロの前で待ってるように言ったじゃない」
「ユニクロの前にいるよ」
「本当に○○駅?」
「うん、○○駅」
何が見えるか言ってもらって、見当をつけて場所を移動。すると、いた。小柄な婆さん。ユニクロとは全く関係のない駅ビルの前だ。
「ここはユニクロじゃないでしょ!」
ともあれ、無事落ち合えてよかった。
家に着くと母は、お土産を一つ一つ出した。
「これは私が作ったなます、これはおせち用…」
よくこれほど、と思うくらいたくさんのお土産が出てきたが、肝心のものが出て来ない。そう、年越しそば。
「年越しそばは?」
「あっ、忘れた」
「そんなことだと思った」
おいちゃんがいたときは年末年始はどうしていただろう。家で過ごしたのは2回くらいしか記憶がない。どうして家で過ごすことにしたのか、それも覚えていない。しかし、2回とも、家でのんびり過ごして、スーパー銭湯に行った記憶がある。
その他の年は、旅行に行ったこともあったが、たいていは私とおいちゃん、双方の実家を泊まり歩いていた。どちらも割と近くだったので、行き来は楽だった。
そのうちにおいちゃんの両親が老人施設に入居するようになった。しばらく私の実家だけに行っていた。しかし、母もついに老人施設に入居の運びとなって、帰るところがなくなった。そして今では、母が私の家に来るようになった。
一泊と言っていたのに滞在はどんどん伸びて行った。
「もう一泊していいかしら?」
「いいよ」
「もっといていいかしら?」
「…いいよ」
母は結局、うちに4泊して、また入居先の施設に戻って行った。
私に何の相談もなく、自分で決めてしまった入居先。交通も実家よりもずっと不便になってしまった。
「こんな所じゃ様子を見に行くのも大変じゃない!何で相談してくれなかったのよ!」
「来なくていいから大丈夫。何でも一人でできるから」
「お葬式はどうするの!自分でできないでしょう!」
「葬式も来なくていいから」
老人版「一人でできるもん!」の世界に、頭がクラクラした。
「そういう訳に行かないの」
「来なくていいの。何でもできるから」
「そう、何でもできるのね。それじゃ、確定申告は自分でしてよ!」
「それはしてくれなきゃ、困る」
まったく勝手なんだから。昔からそうだったけど、年を取ったらそれが余計に目立つようになった。
いつまで生きているかわからない。そう思うと、これも仕方ないと思っている。
そして、私も持病がある身なんだし、自分のしたいこともしたい。なんとか折り合いをつけて、楽しむことにしている。
おいちゃん、ずるいよ。さっさと先に逝って、高みの見物しているなんて。確定申告なんて、おいちゃんの仕事だろうが。
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