なずな日記

2019.06.24

詐欺という訳ではないけれど

詐欺という訳ではないけれど

以前からオレオレ詐欺が話題になっています。テレビや新聞に取り上げられて久しいのに、被害は後を絶たないようです。

 

「大金が必要になって電話で連絡するなんて、そんなことは絶対にないから、出さないでね」

普段からそう言っていれば、親の方もその通りだ、と肝に銘じるでしょう。なんと言ってもオレオレ詐欺は立派な犯罪です。

しかし、犯罪ではないものの、判断力の衰えた人と言うのは、何かとおかしなことをしてしまうものです。

 

私の知っている人の話です。

その方のお母さんには、親しくしている保険屋さんがいて、何かと保険を勧めて来るそうです。

「あんたのために、5年後に500万円がもらえる保険に入ったわよ」

「あら、うれしい」

その保険証券を見せてもらって、小さな字で書いてある説明を読んでみました。すると、お母さんの認識とは違う内容だったことが分かりました。

「お母さん!違うじゃないの!これは5年後に500万円もらえるんじゃなくて、5年以内に私が死ねば500万円が支払われるのよ!」

「えっ、そうなの?」

「5年以上何事もなかったら、支払金額を大幅に下回るわずかなお金が戻ってきます。そんな保険に何口も入っています。払込金額も百万円単位…

「私が5年以内に死ぬ訳がないでしょ!こんな保険に入るなんて」

するとお母さんはにっこり笑って言ったそうです。

「賭けよね~」

 

その人はお母さんに、すぐに解約するように言ったのですが、保険屋さんへの信頼が厚く、逆に、

「あんたとは縁を切る!」

とまで言われたそうです。

 

その後、近所の人からその保険屋さんの悪いうわさを聞いて、やっと目が覚めたとのことでした。

 

その他にも、こんな話もありました。ある親一人子一人の家族。お母さんは高齢者専用賃貸住宅に入居しおており、別居です。

 

一人っ子の長女は結婚もしていないし、体も弱いので頼りにならない。今の住まいに引っ越しのときに頼んだ便利屋さんが大変いい人で、飼えなくなった猫も引き取ってくれた。それでこの人を頼ろうという気になった。

「私が死んだら、長女だけでなく、あなたにも世話になりたい。うちの財産からあなたに300万円上げるから、よろしく」

 

お母さんは、便利屋さんにそう約束しました。お母さんは便利屋さんの家に遊びに行くなど、家族ぐるみで親しく付き合っていました。しかし、その便利屋さんは、ほどなくして事故で亡くなってしまったのです。

 

その方が亡くなったのだから、そんな約束は無効になるというのに、何を思ったのかお母さんは、

「引き取ってもらった猫のごはん代に」

と言って300万円を遺族に渡してしまったのです。

 

「何、それ?血統書付きのすごい猫?」

「ううん、公園で拾った野良猫」

 

血統書付きの猫だろうが、野良猫だろうが、猫は猫。せいぜい鰹節を送れば上等でしょう。

 

彼女はお金を取り返したいと思いましたが、あげたものを返してくれと言って素直に返す人なら、初めから受け取らないだろうし、弁護士だ裁判だと面倒なことになるのも嫌なので、お金は諦めることにしたそうです。

何よりも事の発端は、お母さんが長女のためを思ってしたことです。それが逆に足を引っ張ることになってしまった…

「私のお金じゃなくて母のお金なんだし」

 

このことについてはお母さんも、後になって反省しているようですが、言い訳はいつものセリフだったそうです。

「あの時は仕方なかったの。お前は体が弱いし、結婚していないし…それしか思いつかなかった」

 

「親のお金なんだから仕方ないって思っていなのだけれど…」

今後、誰かが親切にしてくれたからとか、世話になったからなどと言って、常識外れの大金を渡してしまうことがあるかも知れない。お母さんが亡くなったら、葬式代もなかったなんてことになりかねないと、彼女も思うようになりました。

 

今後、大金を使うようなことがあったら、絶対連絡するように、と言い置いたそうですが、

「あの時は仕方なかったの」

「思いつかなかったの」

これが常套文句のお母さんにどれだけ理解できるか…彼女の悩みは尽きません。

 

成年後見人を付けるということも考えられますが、そのためにはお金もかかるし、いろいろな制限があって面倒な一面があるので今の所どちらがいいか、思案している所だそうです。

 

信じられないかも知れませんが、ここに書いたことは本当にあったことです。

老いた親御さんがいる場合は、こんなことがないように、気を付けなくてはなりません。

 

 

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