なずな日記
2019.09.14
今年も、亡くなったおいちゃんの歳を数える月がやってきました。おいちゃんは9月生まれなのです。生きていれば63歳です。しかし、亡くなった人は年を取りません。年を取るのは私です。
そう、問題は私!言いたくありませんが、今年還暦を迎えました。
何が問題って、年とともに体力が衰えるのを感じるのです。私はランニングを趣味にしていますが、50代も前半ならば、マラソン大会でも、日々鍛えることによって30代40代の人にも引けを取りません。
しかし、50代後半になると、気力があっても体がついて行かなくなるのです。その結果、膝や腰を故障して休まざるを得なくなります。そしていざ復帰すると、おのが体の情けない状態に愕然とするのです。
体力が衰えるのは仕方ない。こうなるのは生きとし生けるものの宿命。いずれ来る死と同じように。
体力のある、今しかできないことをしよう。
今ならできそうだけど、そのうち出来なくなること…そうだ!富士山に登ろう!私は、まだ富士山に登ったことがないのです。今ブームだし、登るなら今です。
前置きが長くなりましたが、登ってきましたよ、富士山に。山小屋とバスがセットになったツアーを利用しました。自分のペースで歩きたいので、あえてガイドなしのフリーツアーです。
と言っても頂上までは結構波乱含みでした。
はじめに行ったツアーでは、なんと悪天候のために8合目の山小屋に泊ったものの、頂上に登ることなく下山の憂き目に遭いました。
このとき、8合目の某山小屋に泊ったのですが、運の悪い事に軽い高山病にかかったうえ、隣の寝袋は体の大きな白人男性でした。
隣の外国人男性は、こちら側を向いて眠っています。あまりに接近してくるので、パチン!と、腕をたたきましたが、寝息が一瞬止まっただけです。
「ンゴッ、グッ…スゥウ~…」
ああ、幸せな人。
外国人は本当に多かったです。欧米系、中国系など、半分くらいは外国人なのではないでしょうか。
そのうち山小屋の従業員から、悪天候のため登山中止の連絡が入りました。
もうすぐ頂上に行けると思ったから窮屈さを必死で耐えたのに、登山は中止とは殺生な。
強い風で吹き飛ばされそうになりながら、下山しました。
家に帰った後、次の富士山計画です。来年はどうなっているかわからないから、9月初めに行ってしまえ!!
ということで10日後、富士山リベンジとなりました。
この日は、いい天気。
高山では雲が下に見えて、空の色も平地よりも濃く見えます。
植物の花は色鮮やかで、可憐です。道は険しく登る一方です。私は息を切らしながら、上を目指しました。
先日とは違う山小屋でしたが、夕食はカレーライス、同時に渡される朝食はお稲荷さんというのは、どこの山小屋も同じのようです。ちなみに500mlの水は500円。350mlの缶ビールは600円。ビールの方にお得感がありますが、登山のことを思うと、飲む気にはなりませんでした。
夕食が終わると、少し周りをぶらぶらしてから、あてがわれた寝床である寝袋にもぐりこみました。
気が付くと眠っていました。疲れもあったのでしょう。起きたのは1時半くらいです。
2時15分登山開始。
ヘッドライトの連なりで、すでにたくさんの人が登っているのがわかります。
富士山は渋滞すると言いますが、本当にその通りです。私はせっかちなのでいつもなら追い越す所ですが、空気が薄くて足取りが重く、渋滞しているのに感謝したくらいです。
「頂上まで30分を切りました。がんばってください」
誘導の人が時折励ましてくれます。
「あの、赤い電球が並んでいる所が頂上だよ」
誰かが話をしています。
あそこが頂上。まだ先だ。
苦しい。息が上がる。空気が薄いってこういうことか。もうこんなバカなことはやめよう。
「頂上まであと5分です。もうすぐです」
みんなでゆっくり、ゆっくり登って行くと、ついに頂上に着きました!
「頂上です。おめでとうございます」
苦しかった。小さく「ばんざ~い」と口にしました。今の時刻、4時50分。2時間35分でここまで来ました。
私って、たいしたものじゃない?
お鉢巡りをしたかったのですが、添乗員のお兄さんが、言っていたことを思い出しました。
「6時までには下山するように。バスは11時出発ですが、支度もあるので、10時に5合目につくことを目安にしてください」
お鉢巡りは1時間半から2時間くらいかかると言います。ちょっと時間が足りません。仕方ないので、ご来光を拝んでからそこら辺をうろうろして、6時に下山することにしました。
下りはストックを使って、ザラザラ道を突き進みます。滑るのを利用して一気にザザザと。
登るのは大変だったけど、下るのは楽でした。何と2時間30分ほどで5合目のレストハウスに到着しました。
ガイドブックを見ると、下りのコースタイムは4時間とありました。
私って、けっこうすごいじゃない?
ツアーにはスーパー銭湯での入浴もついていたので、そこで汗を流して帰途につきます。
家に帰ると荷物を片付けて、ほっと一杯。もちろんビール。
やれやれ。無事に帰って来られてよかった。
でも、お鉢巡りができなかったのは心残りだわ。来年も行こうかしら?コースタイムよりずっと速い時間で来られたんだし。
苦しい。息が上がる。空気が薄いってこういうことか。もうこんなバカなことはやめよう。
そう思った私でしたが、のど元過ぎればなんとやら、また来年も富士山に行く気になっているのに気づきました。
生前、おいちゃんは
「俺はふもとの温泉で待っているから、山にはお前ひとりで行って来い」
と言っていましたが、今回はどうしたでしょうね?
おいちゃんも、私についてきてくれて、初めての富士山を満喫したような気がします。
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