なずな日記
2018.03.14
私もいくらかの定期預金を持っていますが、まあ、利息の安いこと。大手の銀行で0.1%、インターネットバンクなどはそれより少し利率がいいけれど、0.3%もあればいい方。100万円預けて3千円にしかなりません。いつかは利率も良くなるのではないかと期待していましたが、もうそれはないでしょう。
そんなことをため息交じりに思っていたある日のこと、信頼しているDさんから、仮想通貨に投資しませんかというお誘いがあったのです。
「これはCコインという仮想通貨なの。私は勉強会に出席してきたのだけれど、頭のいい人って利に敏いというか、違うわね。どうかしら?その時貰ったプリント、ちょっと読んでみて。きっと興味がわくと思うわ」
一緒に食事をしたときに、その印刷物を渡されました。クリアファイルに挟まれたそれは、コピー用紙10枚程度でした。
Cコインに出資すると、金額に応じて何枚かのカードがもらえるそうです。
「クレジットカードで買い物すると、そのお店からカード会社に手数料が入るのは知ってるわよね。それと同じで、このカードを友達に配れば、お友達が買い物するたびに手数料がこっちに入るのよ。」
「そうですか。よく読んで調べてみます」
Dさんは地元では名士です。最近ではその道の業界誌に取り上げられたり、インターネットテレビなどに出演するようになりました。私から見れば、立派な文化人です。Dさんの紹介なら悪くないかも。
しかし、分からないものに手を出してはならないと、おいちゃんがよく言っていました。図書館で仮想通貨についての本を借り、インターネット検索などをして調べることにしました。
検索して調べてみると、仮想通貨とは国の後ろ盾がある通貨ではなく、デジタルデータによってつくられた通貨であるなどと説明されています。
例えばビットコインは上限が2100万枚と決まっています。現金への交換も可能ですが、相場の変動が激しく、今の所お金として使うのではなく、投機対象とされることが多いようです。
そして、渡されたプリントに書いてあることを整理していきました。
・出資した3分の2は自分を紹介した紹介者への配当になる。
・3分の1でR(仮想通貨の一種)を購入、自分のものとなる。
・残りの3分の1は会社の利益になる。
図によって説明されているのが、勧誘するたびに貰える「ボーナス」です。
「あなたの勧誘した人が支払った金額の3分の2をあなたがもらえます。あなたが勧誘した人が誰かを勧誘すると、さらにあなたにもボーナスがもらえます」
私は驚きました。何これ!支払った金額の3分の2が紹介者の懐に入る?ねずみ講じゃない?それに直接仮想通貨を買えば、全額が仮想通貨になるのに、購入を3分の一にしてまで、なぜCコインをかませるの?
それに、カードの手数料が入るなんて、嘘じゃないかしら?仮想通貨の手数料はないに等しいと借りた本に書いてあったもの。
その会社のホームページだというものも見てみましたが、会社概要、事業内容、どこをクリックしてもほとんど動きません。わずかに「contact us」だけがメール画面になるのみです。ダミーと言われるものでしょう。
ホームページにもいろいろあって、金融関係の会社は、機密性の高いホームページを使うものなのに、この会社では格安の機密性のないホームページを使っているとの意見もありました。
Dさんは騙されている!そう確信した私は、すぐに電話をしました。
「Dさん、畦道です」
そしてDさんには、この話はどうも怪しい。その根拠を話した上で、Dさんも手を引いた方がいいと忠告しました。
しかし、Dさんは
「ねずみ講じゃないわよ、全然怪しくないわ。会社のホームページも立派なものよ」
といって取り合おうとしません。
「わかりました、でも、私は今回、遠慮しておきます」
「そう、もったいないわ」
Dさんは私以外にも何人かに声をかけているようでした。でも、そんな話に乗る人はほとんどいなかったようです。
折を見てCコインについてパソコン検索していましたが、Cコインの話はずいぶんと問題になっていたようで、その会社の銀行口座が凍結された、社長が交代したなどの話が飛び交うようになりました。
そのうち、当の会社のホームページにも次のように書かれているのを発見しました。
「当社は仮想通貨とは全く関係ありません。スマホやパソコンのアプリで使うコインを販売する会社です」
アプリで使うコイン?スロットマシンで使うコインみたいなものかしら?
よく分かりませんが、やはり投資する対象にはならない代物だったようです。
うまい話には気を付けなくてはならないのですが、このうまい話を持ってくるのが悪い人とは限らないのが難しいところです。
この話を持って来たDさんは、私が悲しみに打ちひしがれているときにわざわざ遠いところを訪ねて来てくれた人でした。
この人が持ってきた話なら、間違いない…そう思ってしまうのは危険なことです。
もし仮に私がこの話に乗ってしまったら、どうなっていたでしょうか。この会社は仮想通貨Rを買っていないかも知れませんし、本当に買ってくれていたとしても、出したお金の3分の一だけです。それが値上がりすればいいけれど、そうとは限りません。
儲けを出すには、自分が誰かを勧誘しなければなりません。そう、自分が加害者になってしまうのです。
勧誘した人が断ってくれても後々、
「あの仮想通貨詐欺を勧めて来た人」
というレッテルを貼られてしまい、信用も失うことでしょう。現に私もDさんのことはちょっと疑ってかかるようになりました。
Dさんとはこのことではなく、別のことがきっかけになって疎遠になってしまい、今は距離を置いています。今頃どうしているでしょう。今もその道で活躍しておられるようですが。
全部いい人もいなければ、全部悪いという人もいません。「いい人」と思っても、言っていることが正しいとは限りません。やはり自分なりに調べなくてはいけないようです。
さて、世知辛い話はこれくらいにして、次からは懐かしい人を偲びましょうか。
葬儀についての資料を
ご送付いたします。