お伝えしたい『葬儀の知識』
2022.08.09
さくら葬祭の公式ブログでは、私たちのお葬式に対する思い、現場のリアルな情報などをお伝えしておりますが、読者の方からご質問をいただくことがございます。
とてもありがたいことだと思っております。
今回は、そのようなご質問の中から、焼香の意味や起源などについて取り上げてほしいというご要望がございましたので、私たちの考えをお話ししたいと思います。
「葬儀概論」という本があります。この本は葬祭ディレクターのバイブル的な本であり、古代から現在までの葬送の歴史から葬儀の知識、関連法規まで、葬儀の全てが詰まっているといっても過言ではない本です。
たとえば、仏壇を開けるか閉めるか、いろいろな人がいますし宗派によっても違いがあります。「葬儀概論」には、開けておくものと書かれています。
このような、お葬式そのものについての知識だけでなく、葬祭ディレクターとして知っておくべき知識が網羅されている本ですが、そこには焼香についても書かれています。
焼香とは本来お香を焚くことですから、広い意味ではお線香をあげることも焼香のひとつです。
ただし、一般的にはお葬式で焚くお香のことを焼香ということがほとんどだと思います。
現在ではお葬式において必ず行われる儀式の一つになっていますが、そもそもはご遺体の匂い消しという意味がありました。
昔はご遺体を保存するためのドライアイスがありませんでした。少し生々しい話になりますが、高温多湿の日本ではどうしてもご遺体の匂いが気になります。
そこで香をたいて、匂いを消していたことがはじまりだという説があります。つまり、お線香とお焼香は、死者の匂いを消すためだったのです。
もともとは仏教はインドから伝わったものであり、お香も仏教とともに伝わってきました。
インドでは、お香は不浄のものを祓うという意味があり、一晩中お香を絶やさないようにするという習慣は、死者に寄り添うと同時に匂いを消す役割も果たしていました。お香はこの習慣ごと、日本に伝わってきたようですね。
現在においては宗派によってお焼香の回数が1~3回などやり方に違いがありますし、その地域の習慣によってやり方が違うこともあります。
1回目は主香(しゅこう)といい故人様の冥福を祈るもの、2~3回目は従香(じゅうこう)といい主香を消えないようにするもの等、それぞれに意味があるのですが、現代になってから意味づけされたものも多いです。
お葬式はそもそも亡くなった方を弔うためのものです。マナーや作法は大切ですが、最も大切なことは心を込めてお焼香をするということです。お焼香には、参列した人の心を鎮め、心を整えるという意味もあるからです。
ですから、あまりお焼香の回数にこだわることなく、自分自身の心を落ち着かせ、故人様を偲ぶ気持ちを込めて丁寧に行うことが何よりも大切なことでしょう。作法について心配なときは、最初にお焼香される方の真似をすれば大丈夫です。
お焼香に用いる粉末状のお香を抹香といいます。この抹香も値段はピンキリで、高ければ良いものというわけではありません。
香りは故人様の食べ物であると考えられていることから、四十九日を過ぎるまで線香を焚いて死者をあの世に導くという風習もあります。
ですから、抹香をどうしようか迷ったときには、高いものというよりも故人様が好きだった香りに近いものを選ぶというのも良いでしょう。
現在はご遺体の保存も万全で当然故人様から匂いがでませんので、匂い消しという意味合いは薄れてきています。
故人様を弔うために、献花や一礼でも、気持ちがこもっているものならきっと喜んでいただけるのではないかと思います。
昔は人が亡くなった時にお花やお香をお供えしていました。お香典の始まりについては諸説ありますが、昔のお線香は今ほど持ちがよくなかったため、一晩中お香を焚くには近隣の人がお香を持ち寄っていたことが始まりともいわれています。
江戸時代に入り貨幣が流通し始めると、お香を持ち寄る代わりに「これでお香を買ってください」という意味でお金を渡すようになりました。この風習が現在のお香典として残っているということです。
ちなみに、お香典返しでお茶がよく選ばれるのは、賞味期限がなく日持ちする、軽くて持ち帰りやすいという理由もあるのですが、嫌なこともお茶を濁す、故人様との別れを確かにするなどの意味もあるようです。
今回は、「葬儀概論」という本を参考にお焼香や抹香、お香典についてお話ししてきました。これらは葬祭ディレクターとして知っておくべき基本的な知識です。
さくら葬祭の代表・近藤は、書物をしっかり読み込んでいる葬祭ディレクターとルーチンだけでやる葬祭ディレクターでは違うといいます。
ただ、知識があることだけが正解ではないといいます。お葬式はひとつとして同じものはありません。その都度臨機応変に対応できなくてはプロとはいえないでしょう。
むしろ、基本的な知識を頭に入れた上で、「守破離」をできるようにならないといけません。
その昔、蘭奢待(らんじゃたい)という香木が尊ばれておりました。
現在は奈良の東大寺正倉院に保存されている日本最大の香木ですが、空海が中国から持ち帰ったなど歴史には諸説あります。非常に珍しい香木だったため、この香木を手にすることが権力者のステータスでもありました。足利義政、明治天皇とともに織田信長も蘭奢待を切り取った人物として知られています。
信長が本能寺で討たれたのち、豊臣秀吉がご遺体がない状況で葬儀を行い、その際、大徳寺総見院に香木で創った像を持って弔ったといわれています。像は2体作られ、1対は荼毘に付されたそうで、その時は京都中に甘い香りが漂ったのだとか。蘭奢待ほどではないにせよ、香りで信長を弔うとともに、後継者が自分であるということを世に広く知らしめるという意図があったのでしょうか。
それほど、香りというのは昔から故人を偲ぶという行為と結びついていたのですね。
故人を偲ぶなら、お茶の香り、花の香りでもいいですよね。香りを故人に捧げて供養したいという気持ちが何よりも重要です。
例えば、供茶(くちゃ)もありますが、お茶の香りを故人に捧げるという意味でもありだといいます。
弔意を示すことや各宗派ごとの決まりを守ることももちろん大切です。お焼香というと作法やマナーにばかり目が行きがちですが、亡くなられた方へ香りを届けるということ、その行為自体が大切なのかもしれません。
さくら葬祭が考えるお焼香とはこのような意味を持っています。何よりも、故人様への思いを大切にしていきたいと考えます。
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