納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.05.17

故人のカルテ11 結露

おくりびとの想い~

 

やすらかに眠っている姿にしてあげたい。

いつもの姿でお会いしていただきたい。

 

沖縄ではすでに梅雨入りしたそうですね。

亡くなられた方のお身体をお守りしていると、春が終わったことを知る現象があります。

 

「お父さんが汗をかいているんだけど、髪も布団も濡れてしまっているの!」

ご自宅にお身体をご安置した際、度々ご家族から聞かれます。

 

春の終わりを告げる、「結露」による現象です。

 

「結露」と言えば、寒い冬、室内の窓に水滴がつく様子が思い浮かぶのではないでしょうか。

空気には、「飽和水蒸気量」と言って、含むことができる水分量が温度によって異なり、その最大値があります。

温度が高いと、たくさんの水分子を気体の状態(水蒸気…目に見えない)で含むことができますが、温度が下がると、「飽和水蒸気量」を超えてしまい、液体になって目に見えるようになります。

 

もちろん、ドライアイスで冷やしている故人にも結露が生じます。

ドライアイスに近いところでは、凍って「霜」となりますが、ドライアイスから離れた部分は「水滴」となって現れます。

 

日本は、冬は乾燥し、夏は湿気の多い気候です。

湿度とは、空気中に含まれる水蒸気の量が、「飽和水蒸気量」に対して何%かという指標のことです。

ご自宅では、保冷施設と異なって、気温も湿度も調節が難しく、安定することはありません。

湿度が低く、水蒸気の量が「飽和水蒸気量」を超えていない冬場は、クーラーとドライアイスを使用していても、当然結露は少なく、故人から水分が奪われていく現象の方が目につきます。

冬場における故人のお身体
⇒http://sougi-sakura.com/blog/makeup/karte_005/

夏場は、多量の結露との闘いです。

気温も湿度も高いうえ、空気に水蒸気を多く含みます。

クーラーで部屋全体を冷やし、ドライアイスでお身体を冷やすと、布団まで濡れるほどの結露が生じます。

髪質が細く柔らかい方に多いのですが、濡れたために、髪がなくなったのではないかと思うぐらい、その方の印象が変わります。

また、濡れているということは、細菌の繁殖を促し、腐敗の進行も早まります。

ご自宅で、結露による水滴の故人への付着を減らすには、お棺にお連れする(ご納棺する)ことが唯一の方法となります。

密閉して、外気が触れる部分を「お棺」にすることで、結露は「お棺」に現れ、故人への負担が軽減します。

髪も乾かしてさしあげることができます。

 

亡くなられると、汗をかいてお身体の状態を保つ働きはできません。

寒い場所でないと、長く、同じ姿でいられません。

湿度が高すぎる環境も、低すぎる環境も苦手です。

いつも休んでいるベッドより寝心地が悪いようにみえるかもしれませんが、お棺の中でお休みいただくことは、故人の安らかな眠りに欠かせないことなのです。

 

【故人のカルテ】 結露のポイント

  • ご自宅では、ご納棺する以外、結露による水滴の付着を軽減させることはできない。
  • 長期安置となる場合、季節に関わらず、早めのご納棺、クーラーの使用は必須。
  • 結露によって髪が濡れている場合、納棺後に対応する
  • 納棺後、濡れる場所がお身体から棺に移行するので、棺の湾曲も生じる。
  • 平棺は密閉度が下がるので、夏場は要注意。

 

 

Books

私の葬式心得

本書は、自分を「おくられ上手」に、また家族を「おくり上手」にする一冊として、これからの「理想的なお葬式」のあり方を提案していきます。
株式会社SAKURA 代表取締役 近藤卓司著「わたしの葬式心得」幻冬舎出版より発売中です。アマゾンで好評価5つ星。

ご葬儀のご相談は24時間365日

0120-81-4444