納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.04.24

日延べと故人のお身体

TVやラジオから地震の情報が毎日流れて参ります。

私も小学校の時、阪神淡路大震災で怖い思いをしました。

どうか、一人でも多くの方がご無事でありますようお祈りいたします。

 

自分の家に帰ることは、安らぐ場所に戻れること。

辛い病と闘ったあと、誰もが家族のもとに帰りたいと願うものだと思います。

 

一昔前、ご葬儀はご自宅で行うものでした。

亡くなられて、ご自宅でお棺にお連れし(ご納棺)、その日の夜にお通夜ということも少なくありませんでした。

 

昨今の都市部においては、ご自宅でご葬儀を執り行う方が圧倒的に少なくなりました。

(※直葬・火葬式を除く)

 

しかし、人口が多くなった都市部では、建設反対運動が生じない土地などなく、新たに火葬場を建設することが非常に難しくなりました。

 

今ある施設を工夫して対応しているのが現状です。

 

首都圏においては、好ましい時間帯に、翌日お通夜、明後日ご葬儀といった日程を組むこと自体が難しくなりました。

 

特に、そもそも足りない公営の火葬場に併設されている貸し式場を利用する場合、日延べはやむをえません。

 

民営の貸し式場の1/3~1/5程の費用で使用できる公営の貸し式場は、一週間待ってでも利用したいと考える方が多いのです。

 

それほど待つとして、故人のお身体をどのようにお守りすべきでしょうか。

 

生鮮食品に消費期限があるように、お身体も生命活動が停止した段階から恒常性は失われます。

 

冷蔵庫を見てみてください。

葉物野菜は、水分が抜けてしなびてしまいます。

水分の多い果物は、汁が出てきます。

肉類においては、細菌の影響を最も受け、変色や悪臭を生じ、早い段階で腐敗します。

 

冷凍したとしても、色や味わいが変わります。

 

全く変化がないということはあり得ないのです。

 

「希望するご葬儀ができる日程まで待つ」という事は、一昔前は考える必要もなかったことでした。

 

現在では、ご葬儀を待つ間の亡くなられた方のお身体の変化についても考慮しなければなりません。

 

大切な人のご葬儀を執り行うにあたって、最も大切にされることは何でしょうか。

 

費用がかからないこと

故人のお身体の状態を変えたくないこと

ご自宅で過ごすこと

宗教儀礼を重んじること

たくさんの人に見送ってもらうこと

仕事を休まず進めること

その人らしく送ること

 

さまざまなお考えがおありだと思います。

 

住んでいる地域の現状を知った上で、どのようにご葬儀を執り行いたいのか。

愛する家族との最後の時間をどう過ごしたいのか。

亡くなられた方にしてさしあげたいことは何なのか。

 

 

都市部においては、大切な人を失ったばかりの辛い時に優先すべきことを決断しなければならない場合があります。

 

「通夜当日まで自宅に居させてあげたい」

「そのままの姿で見送りたい」

 

ご葬儀を日延べする事によって、これらの想いが叶わなくなることも考えなくてはなりません。

 

私たちが考えるラストメイクとは、このような想いが叶うように、故人へのご処置・メイクをご安置からご葬儀当日まで対応することです。

 

 

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