納棺師が綴る『故人カルテ』

2016.03.25

故人のカルテ07 革皮様化

おくりびとの想い~

 

理容室で髭を剃っているように、気持ちよくお身支度を整えていただきたい。

 

 

病院やホームでのエンゼルケアと呼ばれるご処置の際に、髭剃りをしていただいている故人に度々お会いします。

すっきりされたご様子で、とても良いのですが、ご葬儀を待つ間に、鼻下~下顎にかけて、お肌が黒く変わってしまう部分が生じる事があります。

 

「革皮様化 かくひようか」という現象です。

 

お肌のバリアである「表皮」を失い、肌の本体である柔らかい「真皮」がむき出しになると、乾燥がどんどん進みます。

水分を失って、皮膚が縮み、革のような硬い皮膚に変化してしまう現象のことです。

亡くなられた方の唇が乾燥して、硬く、黒く変色するのも、この現象です。

 

病院やホームでのご処置に立合うことがないので、どのようにされているかはわかりませんが、髭剃りの際に、皮膚の表面も一緒に削ってしまっている事が推察されます。

 

男性がご自身で髭を剃る時のように、たっぷりとクリームを塗って、髭の生えている向きを考え、適切な角度で剃れるカミソリを使用して、肌に負担をかけないように剃ることで避けられる現象です。

 

 

亡くなられた方は、「痛い」とその場で言うことはありませんが、お体に変化を起こして訴えます。

 

痛くならないように髭を剃る。

当たり前の事だと思うのですが。

 

 

【故人のカルテ】 髭剃りのポイント

  • 髭の水分も少なくなるので、硬い事が多い。保湿クリームや蒸しタオルで柔らかくする
  • シェービングフォームやオイルを使用し、肌への負担を減らす
  • 元々剃りにくい部分ほど、傷つけやすく、毛の流れや向きを見ながら剃る
  • カミソリをこまめに交換し、何度も肌に当たらないようにする
  • 髭剃り終了後、保湿クリームを塗って被膜を作り、乾燥から守る

 

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