すべては茶の湯の心から 株式会社さくら葬祭 公式ブログ

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自分の身は自分で守らなくてはいけないということ

 

これから書くことは癒しの言葉ではありません。あまり思い出したくないつらい思い出です。

 

人の不幸は蜜の味といいます。主人の急な死の原因を「人に言えない死に方をしたのかも」など、刑事ドラマよろしく推理する人もいましたし、非常識な対応に戸惑ったこともありました。こういうことは日ごろの行いに左右されるといいますが、私たちはそんなに悪かったのだろうかと、悩んだこともありました。

しかしこんなことはあとから思えば、大したことではありませんでした。

 

おいちゃんは税理士でした。従業員はいません。そして私はおいちゃんの仕事を手伝っていませんでした。もちろん資格もありません。だからうちでやっていた仕事は、おいちゃん亡き後は誰かに引き継がなくてはならないと思い込んでいました。

「おいちゃんに万一のことがあったら、どうすればいいの?」

一度、聞いたことがありました。

「AさんとBさんに相談しなさい」

AさんとBさんはおいちゃんが仲良くしている税理士です。

 

おいちゃんは急死し、その時が来てしまいました。私は葬儀の合間を縫ってA税理士の所に行き、

「畦道は亡くなったので、B税理士と共にこの仕事を引き継いでいただきたい」

そう言って顧問先のリストを渡しました。

こんなにも急いでしまったのは、第一に年に2回ある源泉徴収の支払日が迫っていたからです。おいちゃんは7月6日に亡くなりました。そのわずか4日後の10日は、顧問先の会社は、税務署に社員から預かっていた源泉税を支払わなければならない日です。 

顧問先に迷惑をかけてはいけない、そればかりを考え、私は自分の生活がどうなるかということに思い至りませんでした。

 

そのうち私は、A税理士は顧問先の独り占めを企てているのに気づきました。

大きな体を揺さぶりながら、A税理士は私を見下ろしました。

「こんなもの、誰もやりたがらない。こんな面倒なことをするのは俺だけだよ」

 

見え透いた嘘です。今どきはパソコンの普及により、自分で申告する人が多くなったので、税理士の仕事はなくなる一方です。それがおいちゃんの死で棚からぼた餅のように顧問先が来たのです。A税理士は、思わずほくそ笑んだはずです。

しかし、顧問先の方も、「あの税理士は嫌だ」という声があったので、結果的にB税理士にも引き継ぐことができました。

 

私は顧問先を差し出したA、B税理士から何らかのキックバックがあるものと思っていましたが、A税理士はもちろんのこと、B税理士からも何もありません。

このことを私はインターネットの質問サイトに相談することにしました。

 

税理士の主人が亡くなりました。顧問先を他の税理士に渡しましたが、何のキックバックもありません…

 

それに対し、寄せられた回答は厳しいものでした。

 

言いがかりだ!!

 

金に困っているんだったら、今の住まいを売るなり、パートにでも出てお金を稼ぐことだな。

 

そんな回答ばかりでした。思えば当然のことです。顧問先に対し、仕事をするのは私ではないのですから。

私にも生活がありますので、他の税理士にかけあってもらって、やっとB税理士からは顧問料の一割を一年間だけもらうことができました。

 

しかし、それから2カ月ほどたったある日、大学時代の友人I君からメールが届きました。I君は東北のある都市で税理士をしています。

 

ご主人が亡くなられたとK君から聞きました。事務所はどうなりましたか?

税務署を退職した税理士ならば、年金があるので給料が安くてもいいと言う人がいます。そういう方を紹介してもらって所長として迎えれば経営権だけはなくさずに済みますよ。

 

こんなこと、誰も教えてくれませんでした。

 

自分に何かあったら、A税理士とB税理士に相談しなさい。

 

おいちゃんはこの二人なら悪いようにはしないと思ってそう言ったのでしょう。でも違いました。

 

あかの他人にとって、かつての友達の家族など、路頭に迷おうと野垂れ死にしようと、何ら痛痒を感じないことなのです。

 

経営権だけは残すことができる…そうは言っても自分より能力のある人を管理するのは難しいことです。結局は今のような形で顧問先を人手に渡すしかなかったかも知れません。しかし、他の選択肢がないと思って人手に渡すのと、人手に渡さないで済む方法も考慮した上で、人手に渡すのではまったく違います。

 

もちろん悪いのは何もわからないくせに一人で決めてしまった、無知な私です。おいちゃんの家族か、あるいはI君のような利害関係のない同業者に相談すればよかったのに。でも、すべてがもう遅い。

 

巷では、奥さんに先立たれた男性はみじめだから、奥さんがいるうちに家事を覚えておくべきだとよく言います。

それと同じように、自営業を営んでいるのであれば、奥さんもできれば仕事を手伝うべきだし、ご主人は、自分に何かあったときのためにどうすればいいのか、具体的に文書にしておくことは大変重要だと思います。

 

幸か不幸か、私には子供がいません。一人の身なら、アルバイトと年金、多少の貯えで何とかなります。しかし、お子さんのいる家の大黒柱が亡くなったらどうなりますか?

まだ学校に通っている子がいれば最悪、進学をあきらめなければならなかったり、中退を余儀なくされたりすることもあり得ます。

 

自分の身は自分で守るしかない。おいちゃんの死で骨身にしみてわかったことです。

何よりも、こんな形でおいちゃんの宝物である事務所を失ってしまいました。しかし、今更どうにもならないことなので、早く忘れたいと願っています。

おいちゃんの仕事に対する無理解が私の身に跳ね返った、それを後悔し、恥じています。

 

私の無知が引き起こしたつらい経験を、他の人には転ばぬ先の杖としてもらいたい。そう思っています。

 

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